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2026年10月1日から

インボイスの経過措置が2026年10月から70%に。免税のドライバーに委託料を払う運送会社の負担とやること

インボイス(適格請求書)の登録をしていない、いわゆる免税の業務委託ドライバーに委託料を払っている会社は、その支払いにかかる消費税を全額は控除できません。これまでは経過措置で80%を控除できましたが、2026年10月1日から70%に下がりました。この記事では、いつの配送から70%になるのか、月の支払額ごとにどれくらい負担が増えるのか、帳簿・請求書・単価の見直しで気をつけることを、国税庁と公正取引委員会の資料をもとにまとめます。

公開日 2026年10月19日 ・ 執筆 株式会社Freeny(配送管理アプリ Freck 運営) ・ 制度の内容は2026年10月19日時点で国税庁・公正取引委員会の資料を確認

この記事の要点

  • 免税事業者などからの仕入れで控除できる割合は、2026年10月1日から70%(2028年10月から50%、2030年10月から30%、2031年10月から0%)
  • 80%か70%かは支払日ではなく、配送(役務)が完了した日で決まる
  • 免税のドライバーに月100万円払っている会社なら、納める消費税は9月までより年に約11万円増える目安(原則課税の場合)
  • 簡易課税・2割特例・3割特例を使っている会社は、この割合の変更の影響を受けない
  • 委託料を下げるならドライバーと協議して決める。一方的な値下げや「登録しないなら取引をやめる」という通告は問題になるおそれ
この記事は制度の概要です。自社の申告方法や個別の取引の扱いは、顧問の税理士または所轄の税務署に確認してください。

何が変わったのか

インボイス制度では、仕入れにかかった消費税を差し引く(仕入税額控除)には、原則として相手が発行したインボイスの保存が必要です。インボイスを発行できない免税事業者などからの仕入れは、本来は控除できません。

ただし、制度が始まった2023年10月から一定の期間は、免税事業者などからの仕入れでも、消費税相当額の一定割合を控除できる経過措置があります。2026年4月の法改正で、この経過措置が2年延長されたうえで、割合が次のように見直されました。

課税仕入れの時期控除できる割合
2023年10月1日〜2026年9月30日80%
2026年10月1日〜2028年9月30日70%
2028年10月1日〜2030年9月30日50%
2030年10月1日〜2031年9月30日30%
2031年10月1日以降0%(控除できない)

改正前は「2026年10月から3年間は50%、2029年10月以降は0%」の予定でした。古い情報のまま「10月から50%」と書かれた資料もあるので注意してください。

あわせて、一つの免税事業者などからの仕入れが、年(事業年度)で税込1億円を超える部分は、この経過措置を使えなくなりました(改正前は10億円。2026年10月1日以後に開始する課税期間から)。ドライバー一人への委託料で1億円を超えることはまずありませんが、免税の協力会社に大きく外注している場合は確認してください。

どの配送の分から70%になるのか

80%と70%のどちらを使うかは、課税仕入れを行った時期で決まります。支払った日や請求書を受け取った日ではありません。

国税庁のQ&Aには、9月21日から始まった役務が10月20日に完了し、10月31日に支払う例が載っています。この場合は完了した10月20日が課税仕入れの日になるので、70%で計算します。

月末締めで委託料を払っている場合、9月30日までに完了した配送の分は80%、10月1日以降に完了した配送の分は70%と考えると分かりやすくなります。9月分の委託料を10月に支払っても、配送が9月中に終わっていれば80%です。月をまたぐ契約や、まとめて1つの役務として約束している場合の完了日は、契約の内容で変わるので税理士に確認してください。

負担はいくら増えるのか

免税のドライバーへの委託料(税込)に含まれる消費税相当額は、支払額の10/110です。そのうち控除できない分だけ、納める消費税が増えます。80%から70%に下がったことで、9月までと比べて増える額の目安を、免税のドライバーへの月の支払額(税込)ごとにまとめました。

支払い
(月・税込)
増える税
(月)
増える税
(年)
30万円約2,700円約3.3万円
100万円約9,100円約10.9万円
300万円約2.7万円約32.7万円
600万円約5.5万円約65.5万円

2028年10月に50%になると、9月まで(80%)と比べて増える額はこの表の3倍になります。月100万円の支払いなら、年に約32.7万円です。

計算の前提: 支払額 × 10/110 × (1 − 控除できる割合)。消費税と地方消費税を合わせた目安で、税率10%の委託料だけを対象にしています(高速代などの立替金は含めていません)。実際の税額は、税抜経理か税込経理か、端数の処理などで変わります。

ドライバーが20人を超える会社では、免税のドライバーが何人いるかで、年に数十万円の差になります。

影響を受けない会社もあります。国税庁の資料では、簡易課税制度や2割特例・3割特例を適用している事業者は、消費税の計算上この経過措置の適用はないとされています。仕入れの消費税を実額で計算する原則課税(本則課税)の会社が対象です。自社がどちらで申告しているか分からない場合は、まず税理士に確認してください。

帳簿と請求書で確認すること

1. ドライバーごとに登録の有無を確かめる

経過措置の対象になるのは、インボイスの登録をしていない相手からの仕入れです。ドライバーから受け取った登録番号は、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで確認できます。登録をやめたドライバーがいないかも、あわせて見ておくと安心です。

2. 帳簿に「経過措置の対象である旨」を書き、10月以降は70%で計算する

経過措置を使うには、帳簿の通常の記載事項に加えて、経過措置の対象である旨の記載が必要です。国税庁のQ&Aでは「80%控除対象」「免税事業者からの仕入れ」のように取引ごとに書く方法や、「※」などの記号を付けて「※は経過措置の対象」と別に示す方法が例に挙がっています。10月以降の分は割合が70%に変わるので、会計ソフトの税区分や計算の設定が70%になっているかを、経理の担当者や税理士と確認してください。

3. 請求書等の記載事項をそろえる

経過措置を使うには、帳簿に加えて、区分記載請求書と同じ記載事項がある請求書等の保存も必要です。

ドライバーからの請求書に「税率ごとに合計した税込の金額」や軽減税率の対象である旨が抜けている場合に限り、受け取った側が追記して保存することも認められています。会社が作る支払明細書で保存している場合の扱いは、税理士に確認してください。

委託料を見直すときの注意

控除できる割合が下がると、免税のドライバーへの委託料を見直したくなるかもしれません。財務省・公正取引委員会などが出している「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」(2026年1月30日改正)では、次のように整理されています。

運送の分野でも、運送事業者でつくる協同組合の連合会が、免税の組合員への支払いから消費税相当額を差し引く取り組みについて、公正取引委員会が相談事例を公表しています。十分な協議をせず一方的に価格を決めた場合は、優越的地位の濫用として問題となるおそれがある、という回答です。

見直すときは、70%に下がった分の負担をどう分けるかをドライバーに説明し、協議の経過を書面やメールで残しておくのが安全です。

登録しているドライバー側の変更(2割特例→3割特例)

インボイスの登録をきっかけに免税事業者から課税事業者になった人が、納める消費税を売上の消費税の2割にできる「2割特例」は、2026年9月30日を含む課税期間で終わります。個人事業者(1月〜12月が課税期間)なら、2026年分の申告までが2割特例です。

2026年4月の改正で、個人事業者に限り、2027年分と2028年分は「3割特例」(納める消費税を売上の消費税の3割にできる)が使えるようになりました。2割特例と同じく、インボイスの登録がなければ免税事業者だった課税期間に限られ、法人は対象外です。

たとえば月40万円(税込)の売上がある個人のドライバーなら、売上の消費税は約3.6万円です。納める消費税は、2割特例なら月 約7,300円、3割特例なら月 約1.1万円になります。

ドライバーに登録をお願いする場合は、こうした負担の変化も一緒に伝えると話が進めやすくなります。どの申告方法が有利かはドライバーごとに違うので、判断は本人と税理士・税務署に任せてください。

この記事の根拠(2026年10月19日に確認):
国税庁「インボイス制度 令和8年度税制改正特集」(リーフレット「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」令和8年4月)
国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問113・113-3・114・114-2(令和8年4月改訂)
国税庁「インボイス制度 基礎編」(令和8年5月)
財務省・公正取引委員会・経済産業省・中小企業庁・国土交通省「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」(令和8年1月30日改正)
公正取引委員会「協同組合が委託を受けた運送業務を消費税の免税事業者である組合員に再委託を行う場合に、当該再委託の代金について消費税相当額を差し引いて支払う取組」
自社の申告方法や個別の取引の扱いは、顧問の税理士または所轄の税務署に確認してください。

よくある質問

9月分の委託料を10月に支払う場合、80%と70%のどちらですか?

割合は支払った日ではなく、課税仕入れの時期で決まります。運送のような役務の提供は、原則として約束した役務がすべて完了した日です。9月30日までに完了した配送の分は80%、10月1日以降に完了した分は70%です。

簡易課税を選んでいる会社にも関係がありますか?

国税庁の資料では、簡易課税制度や2割特例・3割特例を適用している事業者は、消費税の計算上この経過措置の適用はないとされています。仕入れの消費税を実額で計算する原則課税(本則課税)の会社が対象です。

免税のドライバーへの委託料を、70%に合わせて下げてもいいですか?

相手と協議して双方が納得して決めた結果であれば、値下げになっても直ちに問題にはなりません。一方で、再交渉が形だけで、免税事業者が負担している消費税も払えない水準に一方的に決めることや、登録しなければ値下げ・取引停止と一方的に通告することは、独占禁止法や取適法上問題となるおそれがあると公正取引委員会などのQ&Aで示されています。

経過措置はいつまで続きますか?

2026年10月1日から2028年9月30日までは70%、2028年10月1日から2030年9月30日までは50%、2030年10月1日から2031年9月30日までは30%で、2031年10月1日以降は控除できなくなります。